床屋にて

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どうやら春はもう来ていたらしい。

どうにも床屋に行く事を億劫に感じて困ってしまう。

頭髪の御世話が多くなる年齢になってしまったので

とにかく時間がかかる所為でもあるのだけど、

考えるまでもなく、床屋なんて行くだけである。

行って座っていれば他人がなんとかしてくれる。

私なんかいつも眠ってしまっているのだから。

(楽な客なのか、嫌な客と思われているのかは知らない)

目を覚ました時に、小さな男の子の泣き声がした。

私の座っている位置からは全く姿が見えないので

何をそんなに一生懸命泣いているのかは分からなかった。

幼い時分は、床屋は怖い処だったろうか?

寝てればすぐに終わるんだから楽にしてなよ、と

男の子に言ってあげれば良かったのかもしれない。

楽な客なのか、嫌な客と思われているのかは

知らないけど。

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